音楽用語~作曲家の意図通りに演奏するには欠かせないことば

平成29年度前期保育士試験、問2では、音楽用語に関する問題が出題されました。音楽用語の出題はほぼ毎回されている重要項目です。普段見慣れないイタリア語ということから、なじめないでいる方も多いのではないでしょうか。音楽用語を覚えるときには、用語ごとに種類分けをするのがお勧めです。
平成29年度 前期【保育実習理論】問2

次のA~Dを意味する音楽用語をア~ウから選んだ場合の正しい組み合わせを一つ 選びなさい。
・だんだん強く
ア cresc. イ rit. ウ dim.
・やや速く
ア moderato イ allegretto ウ adagio
・はじめにもどる
ア D.S.  イ D.C.  ウ al fine
・オクターブ上で
平成29年保育実習理論1 イ bis. ウ to Coda
(組み合わせ)
  A B C D
1 ア イ ア イ
2 ア イ イ ア
3 イ ア ウ イ
4 イ ウ イ ア
5 ウ ウ ア ウ

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音楽用語とは?

音楽を演奏する時に、みなさんが見るのが楽譜ですね。音楽を視覚的に書き表しているこの楽譜、古い時代から様々な書き方があり、それを経て現在の楽譜の形になりました。音楽を全て5線や音符だけで書き表すのには限界がありますが、それを補うものに演奏記号と音楽用語が存在します。

演奏記号は言葉の通り、独特な記号で出来ています。音楽用語は通常、イタリア語を用います。作曲家によってはドイツ語、フランス語で記しているものもありますが、日本の主流はイタリア語になっています。

イタリア語と聞くだけで、大半の日本人は習ったことがないのでためらってしまうことでしょう。でも大丈夫です。イタリア語はほぼ全て、ローマ字読みをすれば発音できてしまうのです。ですから、全くイタリア語を習っていない人でも読めてしまいます。ローマ字のローマって、イタリアですからね。

音楽の用語は次の4つに大別されます。

  • 速度を表す音楽用語
  • 強弱を表す音楽用語
  • 曲想(曲の性格や表情)を表す音楽用語
  • 演奏の方法などを示す音楽用語

速度を表す音楽用語

はじめに速度を表す音楽用語を見ていきましょう。

保育士を目指すみなさん、現役の保育士のみなさんにまず覚えていただきたいのが、基本的な速度用語です。Moderato(モデラート)は中くらいの速さでという意味。これを最初に覚えるといいでしょう。この中くらいの速さを基準として、それより遅い、早いと覚えていくと覚えやすいですよ。※遅い方から順に表記

遅い

Larghisimo(ラルギッシモ)
Adaggisimo(アダジッシモ)

Largo(ラルゴ)…幅広く緩やかに

Adagio(アダージョ)…ゆるやかに

Lentissimo(レンティッシモ)
Larghetto(ラルゲット)
Adagietto(アダジェット)

Lento(レント)…おそく

Andante(アンダンテ)…歩くような速さで

Andantino(アンダンティーノ)

Moderato(モデラート)…中くらいの速さで

Allegretto(アレグレット)

Allegro(アレグロ)…快速に

Allegrissimo(アレグリッシモ)

Vivace(ヴィヴァーチェ)…活発に

Vivacissimo(ヴィヴァチッシモ)

Presto(プレスト)…極めて速く活発に

Prestissimo(プレスティッシモ)

速い

順序はこのようになりますが、ご覧になってわかるように、単独で訳を見ただけでは他の記号との相関関係が掴みづらいのが音楽用語です。そのため、上記のようにある程度のセットで覚えていくといいでしょう。基本の速度用語を覚えたら、語尾に-issimoや-ettoなどが付いている用語を覚えていきます。

この他にもritardandoまたはrit.(リタルダンド)…だんだん遅く や、a tempo(ア テンポ)…もとの速さで など速度の変化に関する用語も覚えておくといいでしょう。

強弱を表す音楽用語

次に強弱を表す音楽用語を覚えます。

強弱を表す音楽用語(記号)は、p(ピアノ)…弱く とf(フォルテ)…強く を軸に覚えるとわかりやすいです。※弱い方から順に表記

弱い

ppp(ピアニッシシモ)
pp(ピアニシモ)

p(ピアノ)…弱く

mp(メゾピアノ)

mf(メゾフォルテ)

f(フォルテ)…強く

ff(フォルテシモ)
fff(フォルテシシモ)

強い

楽譜上でこれらの記号が出て来た時には、その時点で即座に音を弱めたり強めたりしますが、次の音楽用語が出て来た時には強弱に変化をつけていきます。

  • クレッシェンド→次第に強く
    (表記法:『<』『crescendo』『cresc.』)
  • ディミヌエンド→次第に弱く
    (表記法:『>』『diminuendo』『dim.』)
  • デクレッシェンド→次第に弱く
    (表記法:『>』『decrescendo』『decresc.』)

保育士試験では基本的な音楽用語がよく出題ますので、しっかりと押さえておくようにしましょう。

曲想(曲の性格や表情)を表す音楽用語

3番目に曲想を表す音楽用語です。
曲の性格や表情を表す音楽用語はとてもたくさんの数があります。曲を演奏する際に、この音楽用語によって、様々な表現をすることができるからです。

ここでは代表的な用語を挙げています。また、訳に関しては教科書等で若干異なっていますが、意味の筋を捉えてください。

  • cantabile(カンタービレ)
    歌うように
  • brillante(ブリランテ)
    華やかに
  • dolce(ドルチェ)
    柔らかに
  • maestoso(マエストーゾ)
    荘重に
  • pastrale(パストラーレ)
    牧歌風に
  • animato(アニマート)
    生き生きと
  • scherzando(スケルツァンド)
    ふざけて・こっけいに

演奏の方法などを示す音楽用語

最後に演奏の方法などを示す代表的な音楽用語を紹介します。
演奏の方法は通常アーティキュレーションという言葉で表されます。

  • (フェルマータ)
    休止  曲の途中や終わりなどで拍子の運動を停止する場合に用いられます。例えば音符の上にフェルマータの記号があれば音がそのまま伸び、休符の上にフェルマータの記号があれば休みがそのまま伸びます。フェルマータを「伸ばす」と覚えている方も多いと思いますが、実際には「伸ばす」ではなく、「休止」と捉えてください。
  • legato(レガート)
    音の間を切れ目無く滑らかに演奏します。
  • staccato(スタッカート)
    音と音を切り離して音符の約半分の長さで演奏します。
  • tenuto(テヌート)
    音を保持できるように、音符の長さいっぱいに伸ばします。

これらは音楽記号で表されることが多く、セーニョ・ダルセーニョ・ダカーポ・リピート・コーダ・フィーネなど、演奏の順番などを表す記号と併せて覚えておくと良いでしょう。



楽譜に使われている音楽用語は数えきれないほどあります。その全てを保育士試験を目指す方や保育士の方が覚える必要はないでしょう。保育士試験は出題範囲が大変広いですので、幅広い知識が要求されます。そのため、音楽用語に関しては、音楽を演奏する上で最低限必要な、代表的なものを先に覚えることが合格への近道に。保育士の試験には実際にピアノの実技もありますので、ピアノを練習する際にも漠然と音符だけを追うのではなく、速度記号、強弱記号や曲想記号などにも注目して、その都度引きながら音楽用語を覚えていくようにしていきましょう。音楽用語に注意しながら演奏する習慣をつけていけば、自然と演奏そのものも感情を込めて弾けるようになりますし、実技対策としてもメリットになるでしょう。