保育士必須の道具、はさみ大研究

H29年 前期 保育実習理論にはテコの原理を応用したはさみついての問題が出題されました。おそらく、はさみについて聞かれるなど想定外で、驚いた方も多い問題でしたね。保育士って仕事ではさみを使う場面がとても多いもの。この問題、すんなり答えられた方はいましたか。いざ、図を見ると「はさみってどんな作りだったかな」と考えてしまうのではないでしょうか。今回ははさみだけにテーマを絞ってみたいと思います。
平成29年度 前期【保育実習理論】問10

次のはさみに関する【説明】を読んで、【設問】に答えなさい。

【説明】
はさみはテコの原理を応用して、2枚の刃が交わったところで切れる仕組みになっています。 2枚の刃を開いた状態から握る時、親指の付け根で押し付けるようにし、残りの指 は引き寄せるように握ることにより、 2枚の刃に交わる力が働き、切ることができます。 そのため、はさみには右手用と左手用があり、右手用のはさみを左手で切ろうとすると使いづらい構造になっています。

【設問】
次のA~Dのうち、右手用のはさみの組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
はさみの図

(組み合わせ)
1 A B
2 A C
3 A D
4 B C
5 B D

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はさみって?どんな種類があるの?

はさみは3500年以上前から使われていたと言われています。日本では6世紀ごろのはさみが古墳から見つかっているとか。量産されるようになったのは江戸時代、一般家庭に普及したのは江戸末期から明治時代といいますが、今や私達の日常生活にはさみは欠かせません。

はさみは、言うまでもなく、2つの刃で物を挟んで切る道具のことですよね。しかしなかなか奥が深く、世の中にはいろいろな種類のはさみがあるようです。

用途により使い分けるはさみ

はさみ(鋏)は大きく握り鋏と洋鋏に分かれます。握りはさみは家庭科の授業で使ったことのあるかたも多いと思います。直接はさみを手で握って刃を開閉する糸きりはさみも握りはさみです。

【事務用はさみ】
長さは様々ですが、全長150mmから180mm位のものが多く出回っているようで、先丸はさみと剣先はさみの二種類に分かれています。

●先丸はさみ:
刃先が丸くなっている
●剣先はさみ:
刃先が剣のように尖っている

素材はステンレスが多く、糊が付きにくいようにフッ素コーティングされているものや、チタンコーティングされているものも売られています。また、キャップ付のものや右利き用・左利き用があります。園児が使う、子ども用のはさみも、右利き用・左利き用があります。

【工作用はさみ】

●クラフト用はさみ:
細かい細工ができるようになっている
●ピンキングはさみ:
刃がギザギザになっており、切った後の断面がギザギザになる

最近は、ギザギザの山型だけでなく、波型、不規則型などいくつかデザインがありますし、一つの柄で刃先だけを取り替えていろいろな形を楽しめるものも売られています。

●段ボール用はさみ:
段ボールなど厚手のものが切りやすいように、絵と刃の部分が曲がったデザインになっている
●ペットボトル用はさみ:
ごみの分別がしやすいように、蓋近くの固い部分を切りやすいようになっていたり、蓋を開けることもできるようになっていたりするもの
●ガス抜きはさみ:
使用済スプレー缶などに穴を開け、ガスが抜けるようになっている鋏です。円柱形の缶をがっちり掴みやすい形状になっています。

この他にも、板金はさみ・ゴムホース用はさみ・カーペット用はさみ等、いろいろな種類があるようです。

【手芸用はさみ】

●洋裁はさみ:
布を切るのに適したはさみ。布は細い糸を編み込むことによって1枚の布になっている。紙よりも、布の繊維の方が頑丈であるのに、形状としては柔らかいので、すぱっと切るのはなかなか難しい。その為、布切りはさみの方が紙より精度良く作られています。布切りはさみで紙を切ると、布の切り味が衰えると言われている
●糸きりはさみ:
握りはさみが一般的

【料理用はさみ】

●キッチンはさみ:
肉や魚を切るはさみ。瓶の蓋を開けやすいような形状になっているものもある

【園芸用はさみ】
●生花用・植木用・収穫用など様々なものがある

【理美容用はさみ】

●シザーズ:
髪の毛を切るはさみ
 
●セニング:
髪の毛をすくはさみ

【医療用はさみ】

●外科用はさみ:
手術などで使うはさみ

【式典用はさみ】

●セレモニー用:
柄に、おめでたい金の鶴のデザインなどが施されています。

まだまだ他にもいろいろな種類のはさみがあることでしょう。

はさみのしくみ(てこの原理)

はさみはてこの原理を応用して作られています。この、てこの原理をもう一度おさらいしてみましょう。

てことは、固い棒状のもので、大きなものを小さな力で動かすことができるものをいいます。
てこの原理には、力点・支点・作用点があります。支点を中心に回転することができる天秤などがある時、力点は力を加える点、作用点は力が働く点であり、作用点にはおもりなどの負荷があります。支点は動かないよう固定しているため、力点を動かすと作用点が動く仕組みである。

例えば、重い大きな石を動かそうとした時、支点を軸に、板を使って図のように力点から力を加えれば、簡単に石は動きます。これがてこの原理です。以下の図は支点が真ん中になっている第1種てこの図です。この真ん中に来ているものが3つのうちどれかによって、第2種てこ、第3種てこと変わります。

力点視点作用点

ではいったいはさみに使われているてこの原理とはどんなものでしょうか。
図のように、はさみは真ん中のネジの部分を支点にして、力点のハンドルで力を加える事で、作用点である刃が動き、紙などが切れるしくみです。

はさみの力点視点作用点

はさみは図で見るとわかるように交差しているので、通常の持ち方ではさみを持った場合、親指側を握ると刃の下側が上がるように動き、人差し指・中指・薬指側を握ると刃の上側が下りるように動きます。当然、上下は同時に動きます。

右利きと左利き用の違い

右利きと左利きのはさみの違いは、ハンドルの形状が左右対照になっていて、それぞれに持ちやすくなっていることもあるのですが、2枚の刃の合わせ方が異なっています。

理由の1つとしては、切りながらしっかり切り口が見えやすいようにするため。右利きの人は右手で持って作業をするので、左側が見えやすく、左利きの人は左手で持って作業をするので、右側が見えやすいように刃が合わさっています。

そして、もう1つの重要な理由は、力をより切る対象物に伝えやすくするためです。手の形状から、例えば右利きの場合、親指は左方向に押すようにハンドルを握り、残りの指は右に引っ張るように握ります。すると切り口部分の刃のかみ合わせが締まり、よく切れます。このような理由から右利きと左利きのはさみは刃の合わせ方が違うのです。

何も切るものがない状態で、何度もはさみを開いたり閉じたりすると、刃と刃が擦れて、刃を傷めてしまうこともあるので、お勧めできません。



2歳頃になると、母親がはさみを使っている姿を見て「じぶん(○○)も!」とやりたがるような子どもも出てきます。保育園では3歳児頃から1人1本のはさみを使うところも多いのではないでしょうか。最初はチョキンと1回切り、慣れてくるとチョキチョキと連続した動かし方もできるようになってきます。子ども達にも正しい使い方、渡し方を伝えていきたいですね。保育士が使う道具については今後も保育士試験で出題されるかもしれません。はさみ以外にも気になる道具が見つかったら、ぜひ調べてみてくださいね。