認定こども園に移行する公立施設と保育士の需要

保育所に入所することができない待機児童の解消、幼児教育や子育て支援の充実という観点から進められている、公立保育園と公立幼稚園からの子ども園への移行。この新たな試みは、子どもや保護者、そして保育士にとっても今までの保育園とは違った側面が見えてきます。公立施設から子ども園に移行するということは?それに伴う保育士の需要についても見ていきましょう。

認定子ども園とは?

公立幼稚園や公立保育園を統廃合する、もしくは既存の公立施設に保育園としての役割も幼稚園としての役割も持たせた新しい施設です。 子ども園に通う子どもは、保護者が働いている保育を必要とする(2,3号認定)子どももいれば、保護者は働いておらず、幼稚園と同じ在園時間で施設を利用する(1号認定)子どももいます。

認定子ども園化の理由としては、待機児童の解消、そして保育所でも幼児教育を行う為、子育て支援の充実が挙げられています。

しかし、既存の公立施設が統廃合することにより自宅から遠くなり、通えなくなってしまったり、子ども園の規模が大きすぎる、働いている保護者と働いていない保護者の関係が上手くいかない等の課題も残っています。

大阪府から見えてくる認定子ども園の状況

2017年保育白書に大阪保育運動連絡会調べによる、「大阪府内子ども園化状況一覧」が記されています。 この一覧によると、吹田市では公立幼稚園16園と公立保育園18園を統合し、18園の子ども園へ。高槻市では公立幼稚園25園と公立保育園13園を統廃合し子ども園化されています。しかし、吹田市では591人、高槻市では470人の隠れ待機児童が存在し、子ども園化の目的の1つである待機児童解消が実現されているとは言い難いことが現実です。

一方、忠岡市では公立保育園2園と公立保育園2園を統廃合し、子ども園2園へ。隠れ待機児童は0人と記されています。 待機児童解消という目的は果たせたと言えますね。しかし、統廃合し自宅から遠くなってしまった子どももいるかもしれませんし、今までの保育園で培ってきた人間関係を1から築くことに負担を感じる子どもや保護者もいるかもしれません。子どもと保護者にとっては、まだ課題が残ると感じる方も多いのではないでしょうか。

市町村名 概要 内容 実施 隠れ待機児童 待機児童
大阪市 2,482 273
吹田市 公立こども園の認定こども園化。公立保と公立幼を統合し認定こども園化 幼16+保18=34→こ18=18 591 230
茨木市 公立幼稚園の認定こども園化 13園中5園を移行。3歳児を受け入れる 2017(H29)年4月 423 147
高槻市 公立施設を統廃合し認定こども園化(一部保育所民営化) 幼25+保13=35→こ6? 2019(H31)年 470 0
堺市 公立保育所を全園、認定こども園化 2017(H29)年4月 521 16
忠岡町 公立施設を統合し認定こども園化、民営化 公立保2園・公立保2園を統合認定こども園2園へ 200~300人規模 0 0

公立施設が認定子ども園化することによる保育士の需要

認定子ども園が増える事により、新たに保育士を求めるという場合も多く見られます。 例えば、既存の公立幼稚園から認定こども園となった場合には、0,1,2歳児の保育をする為には保育士資格が必須となります。また、3,4,5歳児の担当は幼稚園教諭免許と保育士資格の両方を保有していることが望ましいとされていますが、保育士資格のみでも長時間利用する園児の対応にあたることができる為です。

公立幼稚園から認定子ども園になることで、幼稚園よりも長い時間子どもを預かる事となりますので、幼稚園教諭だけではなく保育士を新たに雇う必要があるのです。

パート保育士にもつながる需要

公立保育園と公立幼稚園の統廃合による、認定子ども園化ではパート保育士が求められているという実態もあります。なぜなら、1号認定の子どもが降園する時間に2,3号認定の子どもへの保育が十分になされない状況を防ぐ為です。降園する子どもの保護者対応をしている間には、保育時間の長い子どもの保育をする為の保育士が必要となるので、短時間のパート保育士の需要が高まるのです。

認定こども園という新しい形態の中で、保育士として働くという選択肢。まだ課題が残る形態ではありますが、自分自身で園を作り上げていくというやりがいを感じる事ができそうですね。

保育園と幼稚園の特徴を兼ね備えた認定こども園。保護者と子ども、そして保育士にとっても、良い面も課題が残る面も見えてきます。子どもが楽しく通え、保護者が安心して利用できる施設。そして、保育士がやりがいを持って働ける場所になっていくと良いですね。