子どもの予防接種~ワクチンの仕組み~

ここ数年の間に、ポリオが経口生ワクチンから注射の単独不活化ワクチンになり、四種混合に、肺炎球菌ワクチン・ヒブワクチンが定期接種化、そして今まで任意接種だった水痘ワクチン、B型肝炎ワクチンが定期接種化される等、定期接種が変更になっています。そのため、子どもの予防接種スケジュールは以前にも増して過密になりました。赤ちゃんは生後2か月から予防接種を受け、時に同時接種しながらハードスケジュールをこなしているのです。
平成28年度後期【子どもの保健】問19

次の文は、予防接種に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を× とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。

A.予防接種とは、病原体やその産物を処理し、人体には害を与えないようにしながら免疫力を付与しようとするものである。

B.予防接種として実際に用いるものをワクチンという。

C.ワクチンには、病原体を弱毒化して、体内で増殖はするものの発症はさせない生ワクチンがある。

D.わが国では予防接種の制度上、定期接種をするものと任意接種であるものに分けられる。

E.乳幼児において、「予防接種法」で定められた予防接種は、義務接種である。

(組み合わせ)
  A B C D E
1 〇 〇 〇 〇 〇
2 〇 〇 〇 〇 ×
3 〇 〇 ×  〇 〇
4 〇 ×  〇 × 〇
5 ×  〇 〇 〇 〇

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ワクチンのしくみ~予防接種はなぜ必要か

生まれて間もない時期から始まる予防接種。どうして子どもの予防接種が必要なのでしょうか。乳幼児期、特に2歳頃までは、病気に対する抵抗力が少なく、感染症にもかかりやすい状態です。予防接種で防げる感染症は防いで、極力感染をしないように、かかっても重症化しないように、周りに移して蔓延させないようにするという目的があります。中には感染をすると、重大な障害を残すなど、死亡に繋がるような感染症もあるため、ワクチンを接種して未然に防ぐことはとても大切です。

予防接種法2条1項には、「疾病に対して免疫の効果を得させるため、疾病の予防に有効であることが確認されているワクチンを、人体に注射し、又は接種すること」と記されています。

このような理由から、乳幼児期の適切な予防接種が大切なのですね。

生ワクチンと不活化ワクチンの違いは?

生ワクチンと不活化ワクチンの違いは?

ワクチンは何で作られているかご存知ですか?
ワクチンは、感染の原因となるウイルスや細菌をもとに作られています。
生ワクチン不活化ワクチンは、その成分の違いにより分類されています。

生ワクチン…病原体となるウイルスや細菌の毒性を弱めて(弱毒化)病原性をなくしたものが原材料。一般的には1回の予防接種で、長く持続する免疫が出来ると言われています。そのため、接種も1回のものも多いです。

不活化ワクチン…病原体となるウイルスや細菌の感染する能力を失わせたものが原材料。 感染とする能力を失わせたもの、すなわち生きたウイルスや細菌などは含まれていません。1回の予防接種では、十分な免疫を獲得しにくいため、複数回に分けて予防接種を受ける必要があります。

予防接種を受けてから、次の予防接種をするまでの期間は、接種したものが生ワクチンか、不活化ワクチンかによって異なります。次回に別のワクチンを接種する場合、生ワクチンは接種後4週間(中27日)、不活化ワクチンは接種後1週間(中6日)以上の間隔をあけることが定められています。同じワクチンを接種する場合は、ワクチンの種類ごとに定められている期間をあけることが必要になります。

副反応とは?

予防接種は、重症化する可能性のある感染症を予防する有効な手段ですが、副反応が出ることもあります。副反応は軽微なものから重篤なものまでありますが、重度の副反応は極めて稀。副反応を心配して、接種をためらうことはありません。感染症にかかってしまった時のリスクの方が大きいと言えるでしょう。

予防接種の副反応は、ワクチンの種類によって異なりますが、軽いものでは、発熱、接種したところの赤みや腫れ、しこりなどが多いです。これらはいずれも一過性で、数日で消失します。しかし、稀なことですが、アナフィラキシーショックなど、重篤な症状がでることもありますので、接種後30分以内は、子どもの様子を観察するなど、目を離さないことも大切です。

保育士としての対応として、予防接種後に登園した子どもに対しては、接種後30分経過していても、変わったところが無いかどうか、気にかけて観察しておくことが望ましいと思います。

予防接種の種類と接種時期

以下は、定期予防接種の種類と標準的な接種期間です。

予防接種名 種類 標準接種期間 定期予防接種の対象年齢
Hib(インフルエンザ菌b型) 不活化ワクチン 生後2か月以上7か月未満で接種開始。27日から56日の間隔で3回接種。初回接種から7か月から13か月の間に追加接種。 生後2か月以上5歳未満
小児用肺炎球菌 不活化ワクチン 生後2か月以上7か月未満で接種開始。27日以上の間隔で3回接種。生後1歳から1歳3ヶ月の間に追加接種(3回目接種後60日以上の間隔を置く) 生後2か月以上5歳未満
B型肝炎 不活化ワクチン 2016年4月1日以降に生まれた子どもが対象。生後2か月に1回目、その後27日以上の間隔をあけて接種、1回目から139日以上の間隔を置いて、生後7~8か月頃に3回目を接種。 生後2か月以上1歳未満
DPT‐IPV 1期(DPT:ジフテリア・百日咳・破傷風 IPV:不活化ポリオ) 不活化ワクチン 生後3ヶ月以上で接種開始。20日から56日の間隔で3回接種。1期の3回目を接種後、1年~1年半の間に追加接種。 生後3か月以上7歳半未満
BCG 生ワクチン 生後5か月以上8か月未満で1回接種。 生後2か月以上1歳未満
MR(麻疹・風疹混合) 生ワクチン 生後1歳(第1期)5歳以上7歳未満で小学校就学前1年間。 生後1歳以上2歳未満(1期)5歳以上7歳未満(2期)
水痘(水ぼうそう) 生ワクチン 生後1歳から1歳3ヶ月の期間に1回接種。初回接種終了後6ヶ月から1年で追加接種。 生後1歳以上3歳未満。
日本脳炎 不活化ワクチン 3歳~4歳の期間に6~28日までの期間をおいて2回。2回目の接種を行ってから約1年後に追加接種。 生後6ヶ月から7歳半(第1期)9歳から13歳(第2期)

この他に、任意予防接種として、ロタウイルスワクチン、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)ワクチン、インフルエンザワクチン、A型肝炎ワクチン、髄膜炎菌ワクチンなどがあります。任意接種ワクチンは、接種するかどうかを、保護者が任意で決めることができますが、決して重要ではないわけではありません。重症化すれば大変な感染症もあります。そのため、任意接種でもワクチンで感染症を予防することが大切です。



保護者が定期予防接種を打ち忘れてしまったというケースに出会っても、定期予防接種の期間内であれば、受けることができる旨を伝えましょう。定期予防接種期間を過ぎてしまっても、任意接種として自己負担で受けることができるワクチンもあります。期間を過ぎてもきっちりと予防接種を受けて、子どもを守ることが大切ということを、保護者に伝えていきたいですね。